大阪の壁面緑化と景観

地球温暖化の原因追及と進行回避が叫ばれるようになったこの20年の間に、もう1つの視点である「都市の緑化」も並行して進められるようになった。緑化と言うと公園造営など大規模なものをイメージしがちだが、より効率的な形で導入されているのが「壁面緑化」である。この場合の壁面はビルなど建築物の壁を指しており、大都市になればなるほど緑化対象の壁面が増えるということになる。壁面緑化の分かるやすい例が、学校や役所など公共施設の壁をツタで覆うというもの。ヒートアイランド化が指摘される大都市にあって、特に夏場の気温上昇を少しでも軽減させる方策として、壁に植物を這わせて冷却化する狙いがある。一方、オフィスビルを中心として商業施設には、この壁面緑化がさほど進んでいないように映る。理由として植物の生育にかかる経費的側面とともに、景観上の問題点を挙げる人も少なくない。

建物の壁面緑化ですぐ思い出すのが、かつての甲子園球場(兵庫県西宮市)ではないだろうか。外壁全体を蔦が繁り、その「量感と涼感」は時代を超えて人々に愛されてきた。ただ、あの蔦の壁がもし大都市のど真ん中に現れ、天高くそびえ立つとなれば、それに対して「都会的景観を損なうのではないか」と消極的な姿勢を見せる関係者が必ず登場してくるだろう。壁面緑化が都市景観をスポイルする要因となりうるのか。神社仏閣の鬱蒼とした木々に郷愁を抱く日本人にすれば、それが垂直に立ち上がって迫り来るように映る壁面緑化には、本能的に忌避感を持つ。景観上の問題と言うよりも、こうなれば日本人の国民性に根ざす問題となってくる。そんな状況を打破すべく、このたび大阪で壁面緑化における実験的試みが行われることになった。大阪駅の目の前に建つ「大阪マルビル」の壁面を緑で覆い尽くすという計画だ。大阪出身で世界的にも著名な建築家である安藤忠雄氏による提案。円筒状の高層ビルが1つの「大木」になる様(さま)は、まさにこれまでの都市緑化の概念を大きく超えるものになりそうだ。元々大阪という都市は中世以降、商人たちの町として発展してきた時代背景もあり、広大な敷地を誇った武家屋敷を明治維新以降、そのまま公園に転用した東京(江戸)と違い、公共的緑地空間が極めて少なかった。

その大阪でこそ垂直方向への緑化は効果を発揮するのではないか―。故郷で示した安藤氏のアイデアには、既存の考え方を深化させ、緑を「広げる」と同時に「立ち上げる」ことこそ、これからの日本の都市緑化には不可欠と問いかけたものだった。

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